

WHAT
アムステルダムを拠点とする非営利団体が主催する国際写真コンテスト「PRIDE PHOTO CONTEST 2023」の受賞作品展を、2024年5月、福岡で開催しました。会場はWITH THE STYLE FUKUOKAのイベントスペース。入場無料・予約不要の2日間です。オランダ王国大使館の後援を受けています。オランダのEバイクメーカーとの協業をきっかけに、Repair Cafe Foundationへの加盟、Dutch Design Weekへの定期訪問など、ビジネスを超えた交流を続けてきました。何度も現地に足を運ぶ中で感じたのは、「意見の一致を強要しない多様性」という文化です。オランダを理想化しているわけではありません。現地にも反対運動はある。ただ、賛成も反対も強要せず、違いをそのまま置いておける空気がある。その感覚は、繰り返し現地に身を置かなければわからなかったと思います。IT企業として、多様性への配慮は行っているつもりでした。アンケート設計で性別を闇雲に聞かない、必要であれば「男性・女性」の2択ではなく第3の選択肢を用意する。そういったことは実践していました。しかしながら、あるアーティストのエアチケットを準備する際に、その方のセクシャリティがマイノリティであることを間接的にお聞きしていたこともあり、「性別をどう聞くのが失礼にならないのか」が社内で議論になりました。「それさえしておけば良い」という思考停止に陥っていたことを自覚した経験でした。それは「個人の指向だから尊重する」という距離の取り方であって、社会の課題として向き合っていたわけではなかった。そんな折、平戸オランダ商館からPRIDE PHOTO展示の提案をいただきました。作品を見て、恥ずかしながら初めて知ったことがたくさんありました。国や文化が変われば、このテーマがどれほど重いものになるか。ほんの数十年前まで、何が起きていたか。「個人の指向だから尊重する」で済ませていた自分たちの想像が、時間的にも空間的にも足りていなかった。これが実施の契機です。これは継続的な取り組みの「0回目」という位置づけです。
HOW
オランダ王国大使館・オランダ商館との連携
主催者として企画立案から実施まで全体を統括しました。オランダとの関係は、Eバイクメーカーとの協業に始まり、Repair Cafe Foundationへの加盟、Dutch Design Weekへの定期訪問など、ビジネスを超えた文化的交流として積み重ねてきたものです。今回はその延長線上で、オランダ王国大使館の後援、オランダ商館との連携による権利関係の調整、現地団体との橋渡し、展示作品の選定を進めました。
事前展示による導入
「LGBTQIA+写真展」という言葉から想像されるものと、実際の作品には大きなギャップがあります。PRIDE PHOTOはテーマ性だけでなく、アート写真としてのコンペティションでもあり、作品の質が極めて高い。そこで、本展示の前にWITH THE STYLE FUKUOKAのカフェスペースに1枚の作品を展示しました。来場者が事前に作品の質と深さを体感できるようにするためです。この「予告」が、本展への適切な期待値を作りました。
開催形式の設計
入場無料・予約不要という、最もオープンな形式を採用しました。LGBTQIA+のイベントでは「当事者のための時間帯」を設けることがあります。それ自体に意味がある場面もありますが、今回はやりませんでした。特定の人だけが来る時間帯を設けることは「逆差別」になりうるという判断もありますが、それ以上に、目指したのはヨーロッパの美術館のような空間でした。誰がいても自然で、誰も特別扱いされない。そういう場所に、誰でもいつでも来られる状態を作りたかった。だからオープンにしました。限定的なPRにとどめつつ、近隣の専門学校への案内も行い、若い世代が自然に国際的な視点に触れる機会として設計しています。
背景の開示
なぜIT企業がこの展示を行うのか。Webサイトに企画の背景を日英併記で詳細に記載しました。考えと立ち位置を隠さずに出すことで、透明性を確保しています。
アムステルダムでの今後の展開協議
開催後、現地の主催団体と直接面談。日本での反響を共有し、今後の継続的な開催、作品選定の方向性、より多くの日本人アーティストの参加促進などについて協議。次回開催に向けた具体的な計画を進行中です。


WHY
「なぜ弊社が?」への答え
日本では「いくら儲かるの?」「LGBTアートは儲かるの?」という質問が飛んできます。一方、開催後にアムステルダムで現地団体と会った際には「LGBTじゃない日本人がやるって聞いて最初は少し驚いたけど、あなたたちみたいな人がいたら社会がよくなるよね」と言われました。この温度差が、そのまま答えです。社会システムによって不利益を被る人がいる場合、そのシステムに乗って生活している人間には責任がある。これが実施の根底にある考えです。
経済利益について
今回は完全に経済的利益を目的としない形で実施しました。将来的に入場料を設定する場合も、透明性の高い収支管理のもと、収益は全額寄付する方針です。このテーマで利益を得ることはしません。
「0回目」という選択
賛成も反対も強要しない。オランダで感じたその姿勢を借りながら、まずは控えめに始める。過度な訴求をせず、作品の力と場の設計で伝える。「0回目」としたのは、そういう判断です。
