

WHAT
ある百貨店のパレット式の駐車場では、入ってくる車をスタッフさんがいくつかの駐車パレットに手で振り分けています。区画の番号を、指で1・2・3・4と示す。暗い半地下で、夏は暑く冬は寒いなか、大変なお仕事だなと以前から思っていました。ある日、その駐車場で、うちわに1〜4を手描きしたものを使っている方がいました。表と裏に数字を書いて、めくって示す。聞けば自作とのことですが、煩わしいから使わない人もいるそうです。そこで、リペアカフェの社外活動として、この「うちわ」を押しボタンで数字が変わるLEDの表示器として作り直しました。
HOW
まず、軽くて片手で持てる「うちわ」はそのままにして、数字を大きく光らせます。手元のボタンは4つ。1・2・3・4に色を割り当て、押した番号が、そのまま7セグメントの数字として表に出ます。夜の半地下でも、離れた車から読める明るさにしました。この場所は、夜はヘッドライトを消すことになっているので、かなり暗くなります。裏側には、いま押しているボタンと同じ色のLEDが灯ります。表を見に回らなくても、「押せているか」と「何を押しているか」が、手元で一目でわかります。材料は、ダイオードやテープLEDなど、リペアカフェにあったもので組みました。電源はTypeCで充電できます。EV充電のコンセントロックに向けて、小さな電池で長く持たせる省電力の設計や表示を開発しているところで、その部品と考え方をそのまま流用したものです。
- 駐車場でスタッフが行う車両誘導を、機械で自動化できますか?
- 屋外の広い駐車場や、車の流れを機械的にさばける場所では、可変式の電光表示やセンサー式の満空表示が有効です。一方、パレット式の立体駐車場のように、人がその場で車のサイズや混み具合を見て振り分ける現場では、案内する人の判断が流れを作っています。この場合、表示を別の場所に自動化するより、案内する人の手元の道具を軽くするほうが、運用に合うことがあります。

WHY
新しい技術や大きな仕組みは、注目されやすいものです。それに、部品やコンポーネントが豊富に手に入る現在は、必要以上に複雑にするほうが、実は簡単な場合もあります。今回のような場所でも、改善案としては、AIで車両認識、スマホ経由でBluetoothで液晶に表示、などが出やすいと感じます。確実に動くだけの地道なソリューションは、どういう意図か、「枯れた技術」と呼ぶことを好む方が多くいらっしゃいます。しかし、今回のような暗い半地下では、見たい情報以外の背景まで光ってしまう全面発光の液晶は、かえって視点がばらけて見づらいことがあります。また、それなりのサイズの液晶は、手で持つには重い、という欠点もあります。操作の観点では、スマホに番号を出し、Bluetoothで手元の表示へ送るという方法は、普段は問題なく動くでしょうし、作ること自体はある意味で今回より簡単で、最先端にも見えます。ただ、無線がなにかの拍子に繋がらないと、その瞬間、数字が出ません。人がその場で車をさばいている最中に、表示だけが止まる。頻度は低くても、起きれば彼らの業務は成立しなくなります。インフラ的な性質を持つ道具は、うまくいっている時ではなく、たまに止まった時の被害から、減点法で考えるべきものです。それでもなお、液晶と通信は選ばれやすい。画面を触ると、離れたところで何かが動く。その仕組みは、見ていて分かりやすく、最新に見えます。こうしたソリューションにたどり着きがちな理由は、課題への費用対効果ではなく、社内の費用対効果——つまりは手間対評価とでもいうべきもの——にあると考えます。本来は、課題を解決したから評価され、評価されたから報酬がある。しかし、評価だけから逆算すれば、両者を切り離すことも可能です。効果はソリューションで出る。評価はアピールで出る。このように両者が切り離されてしまった場所では、意識せず、評価に直結する手間だけが選ばれます。まずは機能で盛り、無理なら、レポートや言霊で。ただ、評価に向かった手間だけでは、課題は解決せず、その裏で、課題が積み上がっていきます。この駐車場で行われていたことは、人が立って、車を見て、手で示していること。だから、それを別のものに置き換えるのではなく、その手のなかにあるうちわを、そのまま軽くして、課題だけを解きました。「使う人にとって何が要るか」だけから逆算すれば、必要なものは驚くほど少なくなります。RepairCafeは営利目的が第一義の活動ではないので、ただ課題だけを見て対応することができたという一例です。
