

WHAT
形のないものを売るサービス系のウェブサイトは、構成が似通いやすいことが難点です。サービス概要、実績、FAQ、問い合わせ。どこを見ても同じ順番で、同じような情報が並んでいます。中でもFAQは厄介な場所のひとつです。特にLPでは、本文で言いたいことを書いた後に、言いづらいことを放り込む場所になりやすい。ともすれば、読まない前提で置いて、何かあったら「書いてありましたよね」に使いかねない場所です。そのうえ最近は、AI検索対策のTipsとして「FAQスキーマを入れましょう」と言われる場合もあり、ページの文脈と関係のないQ&Aまで含まれるシーンも見受けられます。かつて、Q&Aサイトに自作自演で質問と回答を投稿し、被リンクを稼ぐ手法が流行した時期がありますが、20年近く経っているのに、構造的に同じような手法も見聞きします。では2026年に真摯にFAQを作ろうとするとどうなるか。サイトを読んでいる人の質問は「御社の費用は?」「御社のサービスは他社と何が違う?」。サイトの外にいる人の質問は「こんなことに困っている」「こんなサービスないかな?」。質問の主語が違います。前者は「御社は?」、後者は「私はどうすれば?」。この2種類を1つのFAQセクションに並べること自体に無理があるように感じています。自社の新規事業開発支援サービス「Studio MiLL」のサービスLPを制作するにあたり、この問題を解くために、「FAQをページのUIに溶かす」という方法を採用してみました。外から来る人のためには、「AI検索の入口」として、中にいる人には「ちょっとしたUIの体験(今回はポーカーゲーム風)」として、FAQが2つの役割を果たす設計です。
HOW
FAQの2層構造
サイト上のFAQを2層に分けました。ひとつはトランプ風のカードの裏面に配置した一般的な悩み。「新規事業の戦略を作ったが、次に何をすればいいか」「PoCまで進めたが収益化が見えない」といった、新規事業の現場で実際に聞かれる質問です。もうひとつはFAQセクションに配置したサービス固有の問い。「支援費用はどのくらいですか」「なぜアイデア提案は3回なのですか」といった、Studio MiLLという弊社特有のサービスについての質問です。この2つが人に向かっての設計です。対して、機械に向かっては、この2層をすべて構造化データとして登録しています。ポーカー側のFAQは、サイトを見ていない人がAI検索で「新規事業 戦略 次に何をする」と聞いたときに拾われる入口として機能します(そういう質問があるかどうか、という話は一旦横に置きます)。FAQセクション側は、サイトを読んだ上で出てくるサービスへの質問に答えます。
ポーカー風UIの実装
トランプ風カードをすべて定義リストとしてすべてDOMに配置しつつ、UI上はランダムに4枚表示する仕組みにしました。カードをクリックすると裏面の回答が表示され、「Hold」で手元に残すか「Draw」で別のカードに入れ替えるかを選べます。4枚をホールドすると、次のセクションへの導線が表示されます。通常のLPでは、スクロールすることが「前のセクションの内容に同意した」前提で次が書かれています。しかし、読み手はそこまで強い意思で読んでいないことがほとんどです。Holdという行為を挟むことで、受動的な通過を能動的な選択に変え、次のセクションに進んだときに「なんだそれ?」になる確率を下げる効果も(いくばくか)期待しています。
- FAQスキーマはFAQセクション以外にも設置できますか?
- FAQスキーマは、ページ内にQ&A形式のコンテンツがあれば、FAQセクション以外にも設置できることになっていると弊社は理解しています。重要なのは、DOMに質問と回答がテキストとして存在し、構造化データときちんと一致していることです。Studio MiLLでは、すべてのQ&A形式のデータを構造化データとして設置します。

WHY
構造化データをGoogleやAIが評価すると言われているのは、それがページの内容を正確に伝えるからだと考えています。ページの文脈に合わないデータを入れれば、正確に伝わるどころかノイズになります。FAQスキーマを入れること自体が目的になると、ページに属さない質問を無理に並べることになり、人間にとってもAIにとっても不誠実な構造ができあがります。だからFAQをページに「入れる」のではなく、ページのUIに「一部のFAQを溶かす」という選択をしました。サイトを読んでいる人と外にいる人では、質問の主語が違う。人の目にとって違うものは分けて、それぞれに合った出し方をする。ポーカーという形式は、今回、その結果として出てきた実装のひとつの例です。
