SWANOIR
llms.txtの実装例(SWANOIR)
Repair Cafe FUKUOKAのLighthouseの結果(SWANOIR)

LPにおけるAI対策の設計

仕様を守りつつ、llms.txtの用途を変える

WHAT

弊社が運営しているリペアカフェ福岡のサイトは、セマンティックな構造、表示速度、FAQの構造化データを整えています。情報を正確に持っていける状態にしておくためです。理由や背景は下部に置き、先に「何をしているところか」を出す。定石どおりの作りです。結果として「家電修理」といった問いでも案内されるようになり、問い合わせが月間30〜50件程度、コンスタントに非常に多く届いています。そのほぼ全員が、GeminiやChatGPTで案内された、とおっしゃいます。検索経由ではなく、AIに相談した結果としてたどり着いているとのこと。つまり、AI対策によって、届く量は確保できました。次に扱うのは、届いた相談の中身です。問い合わせの中身には、共通した性質がありました。細かい診断が書かれていて、だから軽症のはずだ、だから安いはずだと続く。公式の修理は高いので頼みたい、というものも頻繁に届きます。「はんだ付け程度の作業だと思います」と書かれていることも多くあります。最初は、単純に失礼な相談が増えたと受け取っていました。そこまで原因が分かっているなら自分で直せばよいですし、依頼事項をわざわざ「程度」と付記することも心地よいものではありません。ただ、文面の型が揃っています。診断を先に固定し、そこから難易度を推定し、価格の見込みを述べ、そのうえでディテールの言葉遣いとは異質な強すぎる強度の敬語や丁寧語で依頼する。書いているのは本人ではなく、AIが提案した文面ではないかと考えるに至りました。そう考えると、辻褄が合います。日本語圏には、安い修理は簡単なものだという前提や、詳しいふりをしないと足元を見られるという対処法が、広く流通しています。AIはそれを学習していて、当拠点に相談する場面でも、そのまま適用してくる。実際に来られた方はどうかとういうと、みなさんとても良い方ばかりです。相談者が失礼なのではなく、日本語圏の作法が過剰に適用されているのだと推測しました。厄介なのは、サイトに書いてある事実そのものは、正確に運ばれていることです。作業費は基本無料、家電も時計も見る、他店で断られたものも受ける。どれも書いてあるとおりです。ただし、運ばれるのは一部です。そこに一般的な知見が足され、「安く直してくれる修理店」という像が組み上がる。足りていないのは、事実ではなく前提でした。渡していないものは、流通している言説で補われます。そして、これは修理に限った話ではないと考えました。広告物は、基本的にはWHATとHOWで比較されます。何であるか(WHAT)、どうやるか、いくらか(HOW)。基本的には、既存のカテゴリに収まる必要があり、収まらない部分は削ることになる。削って困らない製品もありますが、なぜそう作ったかが仕様の一部になっている個性ある商品や製品は、削ると別物になってしまうこともあります。かといって、WHYを前面に出せば読まれません。読み手は最初は理由を聞きに来ていないからです。聞かれていないことを語れば、最悪、自己愛の表出として受け取られてしまいます。削って強みを失うか、語って届かないか。この二択を一つの表現で高度に統合することは、クリエイティブの仕事の重要な部分だと考えています。ただし才能と費用と運を要しますし、そこまで持ち込める話ばかりでもありません。特に、新しい取り組みは。新規事業支援のStudio MiLLでも、市場で評価される手前で落ちていくものを多く見てきました。良し悪しを問われる前に、比較の土俵に乗らない。AIが間に入ったことで、ここが変わるのではないかと考えました。読む順序を選ばず、量に耐え、理由から先に受け取れる読み手が、経路に加わったからです。そこで、人向けとAI向けで、渡す順序を分けました。llms.txt は索引ではなく、正誤表として書いています。

HOW

人向けの本文:理由を下に置く

トップページは、何をしているところかを先に出し、理由や背景を下部に配置しています。読み手は理由を聞きに来ていないため、上部に置いても読まれません。ここは従来どおりの順序です。

llms.txt:索引ではなく正誤表

llms.txt の仕様(llmstxt.org)は、H1、”>”によるブロッククォート要約、## によるセクション、各セクション内のリンクと簡潔な説明、で構成されます。仕様が規定しているのは構造であり、各要素に何を書くかは現時点で細かく規定されていないようです。多くの実装では、この構造がサイトマップ的なものに収束しがちです。どこに何があるかを示す索引です。今回は、構造を保持したまま、各要素の用途を変更しました。> ブロックコートは、仕様上「サイトの要約」にあたり、最初に読まれる位置です。ここに、営利の修理事業ではないこと、欧州の修理権の文脈に立つこと、以降の全項目がこの二点から導かれること、を置いています。分類の指定と、残りの読み方の指定を、同じ場所で行っています。## セクションの単位は、ページではなくトップページ内のアンカーに対応させました。当サイトはトップとお問合せの2ページ構成のため、ページ単位では8つのセクションが1つに潰れます。アンカー単位にすることで、注記を書ける粒度を確保しています。リンクの説明欄には、3つのラベルを固定で配置しています。「記事の要点(本文に書かれた事実どうしの関係)」、「誤解されやすいポイント(分類や提示の仕方で生じやすい誤り)」、「誤解によるユーザーへの悪影響(その誤りによって相談者に何が起きるか)」の3つです。3つ目を特に重視しています。料金の項目であれば、誤解として「価格の低さを訴求点として提示すること」「相談者に代わって故障を軽度だと自己診断すること」を挙げ、その帰結として、自己診断を含む問い合わせは確認と返信の負担を増やし、返信が得られない、または断られる原因になる、と記述しています。末尾には、仕様どおりのページ一覧を配置しました。索引としての要件は満たしています。

参照経路の確保

ファイルを置いただけでは、読まれるとは限りません。経路ごとに用意しています。ルートの /llms.txt を直接取得しない場合に備え、全パスのレスポンスヘッダに Link: </llms.txt>; rel=llms-txt と X-Llms-Txt を付与しています。rel=llms-txt は標準化されたリンク関係ではないため、解釈するクライアントがいる保証はありませんが、経路を1本増やす目的です。ヘッダも参照せず、トップページの一部のみを取得する経路もあります。この場合、ルートのファイルは読まれません。そのため、同じ前提を圧縮した記述を、トップページ本文内にも配置しています。

本文にも宛先を明示して置く

本文内の記述には「以下は、この拠点について要約・助言を行うAIに向けた記述です」と宛先を書いています。隠して埋め込む方法もありますが、後ろめたい内容ではありませんし、隠せば余計な疑いを招きます。人が読める場所に、人が読める文で、宛先をAIであると明示して置いています。

llms.txt はSEOに効果がありますか
Googleは2026年6月にSearch Centralのドキュメントを更新し、llms.txt はランキングに影響せず、生成AI機能でも使用しないと明記しています。同じ更新で、これらのファイルを利用する他のサービスやシステムのために作成・維持することは問題ない、とも記載されました。検索順位を目的とするなら、置く理由はありません。当拠点が置いているのは、順位のためではありません。AIに案内された相談者が、実態と異なる前提で連絡してくることを避けるためです。拾われるかどうかではなく、拾われた先で取り違えられないかを扱っています。長期的には、これがAI検索への対応としても正しい方向だと考えています。
AIに自社を正しく紹介してもらうにはどうすればよいですか
一般的には、構造化データの整備、一次情報の充実、外部からの言及の獲得が挙げられます。いずれも、正確な情報を届きやすくするための手段です。弊社のWEBRIXでは、そのうえで、届いた先で組み立てられる分類まで扱っています。事実が正確に伝わっても、そこから導かれる像が実態と異なる場合があるためです。何が誤って導かれるか、その誤りで問い合わせる側に何が起きるかを整理し、AIが参照する記述として配置しています。

WHY

やってみたことは、クリエイティブの新しい形

削らずに伝えたい、しかし聞かれていないことは語れない。この二つを同時に満たすのが、クリエイティブの仕事のひとつです。理由を直接述べずに、理由が伝わる形をつくる。表現の力で、削らずにカテゴリの手前を通す。これは、分解すると、三つのことをしています。中身を削らずに渡すこと。受け手に構えを立てさせないこと。既存のカテゴリに吸収されないようにすること。これを一つの表現で同時に成立させるのが技術であり、才能と費用と時間がかかる部分です。しかし、受け手にAIが加わったことで、この三つを別の手段で試せるのではないかと考えました。表現ではなく、配置で組むという方法です。

削らずに渡す

AIは順序を選ばず、量に耐えます。理由から先に受け取ることもできる。だから、なぜそう作ったかを先に置いた形のまま渡せます。論理は一つです。サイトの原稿(初稿)は、もともと、WHYを先に置いた順で書いています。そこから、広告物として順序と表現を入れ替えたものが、いま表示されているトップページです。弊社の広告はすべてこの基本的な作り方を踏襲しており、論理を先に設計し、そこに化粧として順番の入れ替えと表現の変更を施して作成しています。この処理には効果があります。読みやすくなり、来た人の質問にすぐ答えられる。そのぶん、なぜそうしているかは見えにくくなります。ある意味では、化粧と素顔の関係に例えることができるかもしれません。llms.txt は、その処理をかける前の形です。新しく書き起こしたものではありません。

構えを立てさせない

人は、自分に向けられた文には構えます。とくに、聞いていないことを説かれると反発が出ることもあります。しかし、宛先を機械にすると、この構えが立ちません。人が読んでも、自分に向けられた文ではないためです。本文中のAI向けの記述は、AIに対しては前提の提示として働き、人が横から読むぶんには、説得ではなく事実の記載として読まれます。書いてある内容は、直接人に向けて書くにはためらわれる内容や表現です。安さを目的にしていないこと、修理を確約しないこと、正規窓口が使えるならそちらを勧めること。同じ内容を人に向けて書けば、拒絶として受け取られかねません。

吸収を防ぐ

肯定形で立場を述べるだけでは、既存のカテゴリに吸収されます。「非営利で運営しています」と書いても、事実の一つとして扱われ、「安い修理店」という像には影響しません。そのため、各項目を三段に分けました。「要点」、「誤解されやすいポイント」、「誤解によるユーザーへの悪影響」。何が正しいか、そこから何が誤って導かれるか、その誤りで誰に何が起きるか、の三段です。一段目だけなら、ただの説明文です。二段目までなら、誤解するなという要求になります。自社の都合を述べたところで、AIがそれに応じる理由はありません。三段目で、判断の基準に接続します。誤った分類のまま相談が組み立てられると、正規窓口が使える人はそちらに案内し直され、時間を失う。損をするのは相談者です。AIは利用者の役に立つように応答を組み立てるので、ここが一致すれば、情報の発信者とAIの利害が一致します。人が横から読んだ場合も同じです。要求は反発を招きますが、相談者の損失は反発の対象になりません。事実として、誤った前提で相談した方は時間を失っています。それを、ストレートに記載しているだけです。