

WHAT
2026年7月28日、熊本県で地震が発生しました。同日の21時ころ、熊本県内のEV-HooK設置拠点を一時開放しました。1回あたり1時間まで無料としています。開放したのは、いわい温泉 湯の宿さ蔵(熊本県人吉市)です。通常は施設をご利用のお客様に限定して運用している拠点で、施設のご厚意により、ご利用でない方にも開放いただきました。翌日以降、各社からも無償開放が発表されました。県内の対象充電器を一括するもの、九州エリア全体を対象とするもの、自社の拠点をすべて開けるもの。期間の区切り方も、利用の手順も、サービスによって異なります。
HOW
まず被害を確認する
地震の発生を受けて、当日のうちに施設へ連絡しました。震源からの距離と停電の状況から、状態を確認したい拠点でした。日帰り入浴を含めて通常どおり営業できていることを確認したうえで、開放についてご相談しました。充電にかかる電気代は、EV-HooKが負担します。施設にお願いしたのは、通常は施設利用者に限定している運用を、一時的に緩めていただくことだけです。
手続きを増やさない
決済の仕組みは通常のままです。EV-HooKは後払いで、充電後にSMSで届くリンクから支払う方式のため、開放期間中はそのリンクを無視していただければ、そのまま無料になります。未払いは元からEV-HooK側が引き受けているので、施設に負担は生じません。利用者側の操作も変わりません。アプリのインストールも会員登録も不要で、QRコードを読んで電話番号を入れれば充電が始まります。
1時間で区切る
30kW〜50kWの充電器で1時間あれば、一般家庭の数日分に相当する電力になります。1台が長くとどまることで次の方が使えなくなる状況を避けるため、1回あたりの無料枠をここで区切りました。回数の制限は設けていません。
- 災害時にEV充電器が無料開放されるのはなぜですか
- 停電時にEVを非常用電源として使うケースが増えており、被災地域では移動と電力確保の両方に充電需要が生じます。国内では2024年の能登半島地震以降、充電サービス各社が被災地域の充電器を一定期間無料で開放する対応が定着してきました。対象範囲や期間、利用方法はサービスごとに異なります。EV-HooKでは、拠点ごとに開放範囲を設定できるため、施設の営業状況を確認したうえで、拠点単位で開放を判断しています。
- 施設利用者限定で運用しているEV充電器を、一時的に一般開放できますか
- 設置時に決めた開放条件のまま運用され、施設側で開け閉めを変更できない充電器も少なくありません。EV-HooKは電話番号による利用者識別を使い、誰に開くかを設定として持っています。平日は公用車専用、週末のみ一般開放といった運用のほか、今回のように一時的に開放範囲を緩めることもできます。設定の変更で対応するため、充電器の入れ替えや工事は発生しません。
WHY
ハリケーンが前提にしていたもの
災害時にEV充電器を無料で開放する対応は、米国でテスラが始めたものが嚆矢です。2017年のハリケーン・イルマで、フロリダの避難区域にいた車両に対し、ソフトウェアで制限していたバッテリー容量を一時的に解放し、あわせて避難ルート上のスーパーチャージャーを無料にしました。以降、同社は自然災害時の方針として同じ対応を続けています。ハリケーンには予報があり、人は数日前から逃げます。足りないのは走るための電力です。当時スーパーチャージャーを使えるのはほぼテスラ車のみで、EVの台数もまだまだ少なかった時代の話です。
地震では前提が変わる
一方で、地震には予報がありません。逃げるのではなく、その場に留まるか、周辺への避難がほとんどです。V2Hに対応したEVが一定数ある中で、必要になるのは走るためや車内泊のための電力だけではなく、家に持ち帰る電力も想定されます。J1772やCHAdeMOといった国内の汎用規格は車種を限定せず、EVの台数も当時とは違います。誰に、どこまで開けるかを、日本の災害の状況に合わせて決める必要があると考えました。
災害用に用意したものはない
EV-HooKは、導入時に、施設ごとに充電の使い方を設計しています。お客様は充電しに来ているわけではなく、別の目的があってそこにいる。だから滞在時間に合わせて課金を組み、誰に開くかを設定として持ちます。平日は自社専用、週末は一般開放、施設利用者限定など。そうした運用が、平時から動いています。開放範囲の切り替えも、無料枠を設けても回転の制御が残る課金設計も、アプリを使わない仕組みも、未払いを事業者側が引き受ける後払いも、すべて平時のためのものです。それをそのまま使いました。特に今回、湯の宿さ蔵は温泉施設で日帰り入浴も可能な施設です。断水や停電で入浴できない状況が続くなかで、電気を取りに来た方が、その1時間を待ち時間にせずに済むという期待もありました。
平時に何を固定しないでおくか
仕組みに何かを載せると、有事の際にその分だけ調整事項が増えてしまいます。アプリは利用者に手続きを残し、会員基盤はそこに乗っていない人を対象から外します。設置時に開放条件を決め込んでしまい過ぎると、施設は開けることも断ることもできません。非常時に何を用意しておくかではなく、平時に何を固定しないでおくか。最適題は、そちらにあると考えています。
