補助金要件と施設運営のズレ
- 24時間公開
- 営業時間外にも来訪者が発生します。照明や防犯カメラの維持、深夜のトラブル対応など、施設側の負担は小さくありません。
- EV専用駐車場の確保
- 限られた駐車スペースの一部を常時専有することを意味します。充電利用がなくても他の車両は停められず、満車の時間帯が発生し得るような駐車場や、繁忙期には特に問題になります。
- 施設利用者以外にも開放
- 施設の顧客ではない来訪者が増え、本来の顧客サービスへの影響も懸念されます。

補助金の要件と施設運営の実態にはズレが生じやすい。(Photo by SWANOIR)
採択されやすい場所と充電需要のミスマッチ
補助金には申請されやすい場所の傾向があります。都市部の好立地は競争が激しく、上記のような要件を満たす車室の確保自体が難しいため、地方や郊外の方が申請されやすい。しかし、補助金の要件を満たしやすい場所は、往々にして充電需要が少ない場所でもあります。
充電器の設置を検討する施設にとって、補助金は大きなメリットです。急速充電器の導入には数百万円から数千万円の費用がかかるため、補助金なしでは導入に踏み切れないケースも多い。結果として、「充電需要があるから設置する」ではなく、「補助金が取れるから設置する」という判断になりやすい構造があります。
この構造的なミスマッチにより、使われない充電器が生まれやすい状況になっています。設置数は増えても、稼働率が低い充電器が各地に点在する。これが現在の充電インフラの一側面であり、一概に「充電器の数が少ない」とも言えない理由でもあります。
補助金を利用したEV充電器について、「ばら撒き」や「稼働率の報告」を求める批判をインターネットで見かけることも多くなりましたが、この批判は制度自体からやむを得ず生まれている側面もあり、根が深い問題です。
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充電器と滞在時間のミスマッチ「速い充電器に入れ替える」という解決策への疑問
こうした状況に対して、「充電器が遅いから使われない」「もっと速い充電器に入れ替えるべき」という議論があります。高速道路のサービスエリアであれば、その通りかもしれません。
しかし、一定の滞在時間がある施設では話が異なります。2〜3時間の滞在が見込める場所であれば、30kW程度の充電器でも十分に機能する余地があります。稼働率が低い原因は「速度」ではなく、前述のような構造的な問題であることが多いのです。
急速充電器への入替には大きな設備投資が必要です。構造的な問題を解決しないまま高速化しても、根本的な解決にはなりません。
第三の選択肢:既存設備の運用改善
「撤去」か「新しい高速充電器への入替」か。この二択で悩む前に、検討できる選択肢があります。既存設備の運用改善です。
課金システムの見直しにより、施設の特性に合った運用に変えられる場合があります。設備投資を抑えながら、「使われない充電器」を「使われる充電器」に変える。補助金の要件から離れることで、施設本来の目的に沿った運用が可能になります。

撤去・入替以外に、運用改善という選択肢がある。(Photo by SWANOIR)




