SWANOIR

2020.6.3

Written By MOM

自宅のEV充電工事の「アイミツ」をもっと効果的にする方法

EV自宅充電工事を検討する際、「相見積もりを取りたい」とお考えになる方がいらっしゃいます。複数の業者から見積もりを取ることで、適正価格を把握し、より良い条件で工事を実現したいというお気持ちは理解できます。一方で、EV充電工事の相見積もりには、検討する際の重要なポイントがいくつかあります。

EV充電見積もりイメージ

なぜ「相見積もり」を検討するのか

EV充電工事はまだ新しい分野であり、相場感をつかみにくいのが現状です。また、業者によって提案内容や価格が大きく異なることが多く、慎重に検討したいと考える方が多いようです。このような状況では、複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討したいと考えるのは自然な流れです。

見積もりの本来の意味

見積もりとは本来、明確に定義された「要件」に対するアンサーです。公共事業やシステム開発の分野では、発注者が詳細な仕様書や要求仕様書(RFP:Request for Proposal)を作成し、それに基づいて各業者が提案と見積もりを行います。この場合、同じ要件に対する複数の提案を比較するため、相見積もりに意味があります。

企業がシステム開発を外部委託する際も、要件定義書を作成してから複数のベンダーに見積もりを依頼します。要件定義が困難な場合は、専門のコンサルタントにRFP支援業務を依頼し、適切な費用を支払って要件を明確にします。

EV充電工事で起こりがちな課題

現在のEV充電工事では、多くの場合、明確な要件定義を行わずに見積もりを依頼する状況があります。その結果、業者ごとに異なる前提条件で見積もりが作成され、適切な比較が困難な状況が生まれています。実際によくある具体的な例です。
A社の見積もり
工事費5万円で、3kWコンセント設置、自宅への穴あけ工事、メンテナンス対応なし
B社の見積もり
本体込み20万円で、6kW専用充電器設置、引込工事により自宅損傷なし、長期メンテナンス対応あり
この2つの見積もりを比較した場合、価格を重視すればA社を選ぶ判断もあります。しかし、充電能力、施工方法、アフターサービスが全く異なる条件での比較となります。特にA社の場合、メンテナンス対応がないため、故障時の修理費用が別途発生し、長期的に見ると結果的に費用が高くなる可能性もあります。さらに複雑なのは、B社がA社と同じ条件(3kWコンセント設置、穴あけ工事、メンテナンス対応なし)で見積もりを出した場合、A社より安い可能性もあることです。また、A社がB社のような高スペックな施工を提案しないのは、技術的な制約や設備上の理由があるかもしれません。逆に、B社がシンプルな工事を提案しないのも、品質方針や技術的な判断による可能性があります。このように、業者ごとに異なる前提や制約があることも、単純な比較を困難にしています。
異なる条件の見積もり比較

同じ「EV充電工事」でも施工内容が異なれば、見積もりを適切に比較できなくなることがあります。(Photo By Zaptec on Unsplash)

現場調査費用について

一部の業者は現場調査に費用を請求します。この現場調査では、実際の設置環境を詳細に確認し、最適な施工方法を検討する重要な作業が行われます。

この現場調査で作成された結線図や施工内容の情報は、他の業者でも活用できる価値のある情報となります。つまり、現場調査は「具体的で実用的な情報」を提供するサービスでもあります。この観点から、現場調査に費用が発生することには合理的な理由があります。

適切な業者選びのために

EV充電工事で重要なのは、価格の比較だけでなく、ご自身のニーズに最も適した提案をしてくれる業者を見つけることです。まず、ご自身の要件を明確にすることから始めることができます。

必要な充電能力(3kW、6kW など)、設置場所の制約条件、予算の上限、アフターサービスの希望、工事による自宅への影響の許容範囲などの要件を整理した上で、それに適した提案をしてくれる業者を選択することが、満足度の高いEV充電環境を実現する近道です。

適切な業者選びのポイント

要件を明確にしてから業者に相談することで、価格以外の価値も含めた適切な判断が可能になります。(Photo By SWANOIR)

総合的な価値で判断することが重要

EV充電工事に限らず、大切なご自宅に影響する製品やサービスは、単純な価格比較ではなく、総合的な価値で判断することが大切です。明確な要件なしに複数の見積もりを比較しても、意味のある判断は困難です。

重要なのは、ご自身のニーズを明確にし、それに最も適した対応が可能な、信頼できる業者を選ぶことです。業界の健全な発展のためにも、価格以外の価値も含めた適切な判断が重要です。

この記事は2020年6月時点の状況に基づいています。業界の動向は日々変化していますので、最新情報は各業者様や事業者様に直接ご確認ください。