電気容量を制限する4つの要素
- メーター
- 電力メーターには測定可能な電流値に上限があり、このメーター容量を超える電流は物理的に測定できません。ただし、この制限は多くの家庭でそれほど致命的にはなりません。大きめに設定されているからです。ただし、このメーターが後述の契約量をコントロールしていることがあるため重要です。
- ドロップ(引込)
- 電柱から自宅までのドロップには、線材の太さによる電流容量の制限があります。この引込線は基幹となる配線であり、自己都合による交換には相応の費用と時間が必要な場合があります。また、地中埋設エリアなど、特殊な電柱の位置や周辺環境によっては物理的に変更ができない場合もあります。引込線の容量不足は、根本的な制約となります。
- ブレーカー(契約ブレーカー)
- 分電盤内の主ブレーカーも容量を制限する要因の一つです。ただし、ブレーカーの容量と電力会社との契約容量は必ずしも一致しません。時期や契約形態によって、ブレーカー容量が契約容量と同じ場合もあれば(ブレーカーそのものが電力会社のものである場合もある)、ブレーカー容量以下の場合もあります。この関係を正確に把握せずに容量変更を検討すると、想定外の工事や費用が発生することがあります。
- 電気契約
- 電力会社との契約上限値(AやkW)も重要な制限要因です。契約値を超える使用は料金面でのペナルティや供給停止の対象となります。契約変更は書面上の手続きですが、前述の物理的制約(メーター、引込線、ブレーカー)がクリアされていることが前提となります。

電力容量は4つの要素で制限されているため、各家庭や各契約で同じ対応を行うわけではない(Photo by Shekh Kayes on Unsplash)
容量変更申請の複雑さ
「容量変更の申請は自分でやれば費用がかからないので自分でやる」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、これは自動車の名義変更のような書類手続きとは根本的に異なります。容量変更申請は、前述の4つの制約要素すべてが技術的にクリアできることを前提とした、電力会社との折衝を含めた複合的な手続きです。
書面上の契約変更だけで済むケースは実際には限定的であり、多くの場合は何らかの設備工事や電力会社への折衝や説明を伴います。この作業を正確に行うには、電気工事や電力供給、約款といった知識が不可欠です。
電力会社への問い合わせで注意すべき点
容量変更について電力会社のコールセンターに頻繁に問い合わせを行う方がいらっしゃいますが、これは推奨できません。コールセンターのオペレーターは丁寧にご案内してくれますが、あくまでも一般的な対応であり、個別の技術的な判断や詳細な工事内容については回答できない場合が多くあります。
また、問い合わせ内容によっては、後の正式な申請時に不利に働く場合もあります。不正確な情報や見込みに基づいた問合せや、技術的に不適切な要求は、申請者の理解度や工事の妥当性に疑問を持たれる原因となることがあります。

電力会社への問合せでは、公共サービスを提供している企業特有の考え方を理解しておいた方がスムース(Photo by Vikram S Udaipur on Unsplash)
公共性への配慮が必要
引込線から電柱側は電力会社の設備であり、社会インフラとしての公共性があります。一軒の住宅の容量変更であっても、周辺の電力供給や設備に影響を与える可能性があります。そのため、容量変更は個人の都合だけで決定できるものではなく、地域全体の電力インフラとの調和が求められます。
電力会社は社会全体が顧客であり、一般的な消費財の企業とは観点が異なる部分があるため、この特殊な関係も慎重な対応が必要な理由です。