電力要件の違い
一般的な家庭用コンセントは15Aまたは20Aの100Vですが、EV充電器は30A〜60Aの200Vを使用することが一般的です。電力で比較すると、家庭用コンセントの約3〜6倍の電力を必要としており、小さなお部屋一つ分程度の電力が必要になります。
この電力差により、既存の分電盤では容量が不足することがあります。また、200V電源は家庭では洗濯機やエアコンなどの大型家電で使用されているため、専用回路の新設が必要になることが多くあります。

EV充電器は一般的なコンセントの3〜6倍の電力を必要とする。(Photo By SWANOIR)
設置場所による配線の違い
EV充電器は駐車場や玄関先など、屋外に設置されることがほとんどです。分電盤から設置場所まで10メートル以上、場合によっては20メートル以上の配線が必要になることが一般的です。
この長距離配線では電圧降下が発生しやすく、適切な対策を行わないと充電出力の低下や充電エラーによる停止が起こります。これらの問題は実際に車両で充電を開始するまで完全に発見できないことも多く、事前の設計段階での保守的な配慮と実車での確認が重要です。
さらに、屋外設置では防水性能や耐候性への配慮が必要です。温度変化による配線への影響や、設置位置によっては風雨への対策も考慮する必要があります。また、関東や九州など火山灰の影響があるエリアでは、地絡の対策なども検討しておくと、不具合の可能性を大きく低減できます。
これらの要素は室内のコンセント工事では経験することが少なく、屋外のEV充電器特有の配慮事項です。

長距離配線や屋外設置による長期安定稼働への対策が重要。(Photo By SWANOIR)
EV充電特有の電力消費パターン
一般的な家電製品は電源投入時のピーク電力の後、安定運転に移行したり待機状態になったりと、電力消費にメリハリがあります。一方、EV充電器は数時間にわたって比較的大きな電力を連続的に供給し続けるという特徴があります。
この連続的な供給により、配線や接続部分への負荷が長時間継続します。そのため、配線材料の選定や接続部の施工が通常の電気工事以上に重要になります。これは、インストールマニュアルだけでなく、多くの施工を通した経験値にも左右されます。
ブレーカーとの適合
EV充電器の設置では、充電器とブレーカーの組み合わせにも注意が必要です。一般的な家電では既存のブレーカーに複数の機器を接続することが一般的ですが、EV充電器では専用ブレーカーの新設が必要になることが多くの場合義務付けられています。
充電器の定格とブレーカーの定格には適切な関係があります。この組み合わせを適切に行うことはもちろんですが、将来的な車両変更や増車の可能性も考慮した施工を行うことで、長期的なコストを大きく抑えることができます。

専用ブレーカーの新設と適切な組み合わせが必要。(Photo By Nicoleta Costin on Unsplash)