SWANOIR

2021.4.24

Written By MOM

急速充電器の賢い使い方

EV(電気自動車)の急速充電器は少し「クセ」があり、使い方次第で便利にも不便にもなるものです。「いつまで充電するのが良いのか」「なんだか料金が高くついてしまう」「充電時間が長くて疲れる」といった悩みを耳にすることもあります。急速充電器には効率的な使い方があり、バッテリー残量20%から60%の範囲で使うのがベストです。この範囲で使う理由は、バッテリー、待ち時間、コストの3つの観点から明確に説明できます。

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20%〜60%がベストな3つの理由

急速充電器を20%から60%の範囲で使うべき理由は、以下の3つです。
バッテリーの保護
EVによく使われているリチウムイオンバッテリーは、30%から80%程度の範囲で使うのが最も長寿命化につながるとされています。0%近くまで使い切ったり、常に100%まで満充電にしたりすることは、バッテリーにとって大きなストレスとなります。また、急速充電自体もバッテリーに負荷をかけるため、必要な分だけに留めることが推奨されています。
待ち時間低減
急速充電の速度は、バッテリー残量によって大きく変わります。20%から60%の範囲では充電器の最高出力に近い出力が期待できますが、60%を超えると充電速度が徐々に低下し、80%以降は大幅に制限されることが多くあります。例えば、70kW程度のバッテリーを搭載したBEVの場合、20%から60%まで約30分で充電できますが、60%から80%までも約30分かかります。つまり、同じ20%分の電力を入れるのに、後半は前半より倍程度の時間がかかるということです。
コスト効率
多くの急速充電器は時間課金制を採用しており、実際に入った電力量ではなく接続時間で料金が決まります。段階的な価格設定はあるものの、充電速度が落ちても同じ料金がかかり続けるため、60%以降の充電は非効率的になります。
近年、従量課金制(kWhあたりの料金)を採用する充電器も増えていますが、この場合でも60%以降は充電速度が落ちるため、充電器に拘束される時間が長くなります。料金面では公平に見えても、時間効率の観点では解決になっていないため、忙しい場合にはあまり解決策になりません。
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バッテリー残量によって充電速度は大きく変化し、20%〜60%が最も効率的。(Photo By SWANOIR)

代替案:30kW〜50kWで2時間程度

急速充電の他の選択肢として、30kWから50kW程度の中速充電で2時間程度かけて充電する方法もあります。この方法には、バッテリーへの負荷が比較的少ない、料金が比較的安い、充電速度の変動が少ないといったメリットがあります。

買い物や食事で2時間程度滞在する商業施設などでは、この中速充電が非常に効果的です。急速充電ほど速くはありませんが、バッテリーに優しく、コスト効率も良好です。

マンションの方には特に重要

自宅に充電設備がない集合住宅の方にとって、公共充電器の利用方法は特に重要です。限られた充電機会を最大限活用するため、効率的な充電方法の確保が必要になります。

20%から60%の範囲で急速充電を使い、それ以外は普通充電を活用するという使い分けで、待ち時間を最小限に抑えながら、バッテリーを大切に扱うことができます。

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マンション住民にとって効率的な充電は特に重要。(Photo By SWANOIR)

行きつけの充電スポットを作る

効率的な充電のために最も重要なのは、行きつけの充電スポットを作ることです。急速充電器や普通充電器の場所を把握し、料金体系や混雑状況を把握しておくことで、状況に応じた最適な選択ができます。

EVオーナーが充電を目的として車を運転することは現実的ではありません。「気がつけば充電が完了している」という環境を確保することで、電気自動車のメリットを最大限に活かすことができます。

効率的な充電戦略でEVライフを快適に

急速充電器は20%から60%で使い、それ以外は中速充電や普通充電を活用する。この基本を押さえることで、バッテリーを大切にしながら、待ち時間とコストを最小限に抑えた快適なEVライフが実現できます。

この記事は2021年4月時点の状況に基づいています。充電器の仕様や料金体系は事業者によって異なりますので、最新情報は各事業者に直接ご確認ください。