20%〜60%がベストな3つの理由
- バッテリーの保護
- EVによく使われているリチウムイオンバッテリーは、30%から80%程度の範囲で使うのが最も長寿命化につながるとされています。0%近くまで使い切ったり、常に100%まで満充電にしたりすることは、バッテリーにとって大きなストレスとなります。また、急速充電自体もバッテリーに負荷をかけるため、必要な分だけに留めることが推奨されています。
- 待ち時間低減
- 急速充電の速度は、バッテリー残量によって大きく変わります。20%から60%の範囲では充電器の最高出力に近い出力が期待できますが、60%を超えると充電速度が徐々に低下し、80%以降は大幅に制限されることが多くあります。例えば、70kW程度のバッテリーを搭載したBEVの場合、20%から60%まで約30分で充電できますが、60%から80%までも約30分かかります。つまり、同じ20%分の電力を入れるのに、後半は前半より倍程度の時間がかかるということです。
- コスト効率
- 多くの急速充電器は時間課金制を採用しており、実際に入った電力量ではなく接続時間で料金が決まります。段階的な価格設定はあるものの、充電速度が落ちても同じ料金がかかり続けるため、60%以降の充電は非効率的になります。

バッテリー残量によって充電速度は大きく変化し、20%〜60%が最も効率的。(Photo By SWANOIR)
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EVの充電の仕組みと充電速度代替案:30kW〜50kWで2時間程度
急速充電の他の選択肢として、30kWから50kW程度の中速充電で2時間程度かけて充電する方法もあります。この方法には、バッテリーへの負荷が比較的少ない、料金が比較的安い、充電速度の変動が少ないといったメリットがあります。
買い物や食事で2時間程度滞在する商業施設などでは、この中速充電が非常に効果的です。急速充電ほど速くはありませんが、バッテリーに優しく、コスト効率も良好です。
マンションの方には特に重要
自宅に充電設備がない集合住宅の方にとって、公共充電器の利用方法は特に重要です。限られた充電機会を最大限活用するため、効率的な充電方法の確保が必要になります。
20%から60%の範囲で急速充電を使い、それ以外は普通充電を活用するという使い分けで、待ち時間を最小限に抑えながら、バッテリーを大切に扱うことができます。

マンション住民にとって効率的な充電は特に重要。(Photo By SWANOIR)
行きつけの充電スポットを作る
効率的な充電のために最も重要なのは、行きつけの充電スポットを作ることです。急速充電器や普通充電器の場所を把握し、料金体系や混雑状況を把握しておくことで、状況に応じた最適な選択ができます。
EVオーナーが充電を目的として車を運転することは現実的ではありません。「気がつけば充電が完了している」という環境を確保することで、電気自動車のメリットを最大限に活かすことができます。