従来の3分類では見えない利用形態の違い
「経路充電」「基礎充電」「目的地充電」という分類は、充電する場所や目的に焦点を当てています。経路充電は移動途中での急速充電、基礎充電は自宅での日常的な充電、目的地充電は訪問先での充電という整理です。
この分類には一定の意味がありますが、実際の運用面では重要な要素が抜け落ちています。同じ「基礎充電」でも、戸建住宅の居住者さんの専用充電器とマンションの住人さんの共用充電器では、利用方法や課金システムが根本的に異なります。また、同じ「目的地充電」でも、企業に設置された従業員専用の充電器と来客向けの公開型充電器では、利用権限や料金設定が大きく違います。
従来の3分類は場所による分類であり、利用権限による分類ではありません。しかし、充電インフラの実際の運用では、「誰が使えるのか」という利用権限こそが最も重要な要素となります。
専用充電器vs共用充電器:基本的な利用形態の違い
充電器の利用形態を理解するためには、まず「専用充電器」と「共用充電器」という基本的な分類が必要です。専用充電器は特定の個人または車両のみが利用できる充電器で、共用充電器は複数のユーザーが共同で利用する充電器です。
専用充電器の典型例は、戸建住宅に設置された家庭用充電器や、企業の社用車専用充電器です。これらは利用者が限定されており、課金システムは原則として必要ありません。固定費である基本料金の賦課についての議論はありますが、原則として所有者が電力料金を直接負担する形となります。
一方、共用充電器は複数のユーザーが利用するため、利用者の特定、使用量の計測、料金の徴収といったシステムが必要になります。この分類が、課金システムの選定における最も重要な課題です。

専用充電器と共用充電器に求められる管理や課金システムは大きく異なる。(Photo by SWANOIR)
共用充電器の細分化:一部共有と公開型共有
共用充電器はさらに「一部共有」と「公開型共有」に分類できます。この区分は利用者の範囲と課金方式に大きな影響を与えます。
一部共有は、限定されたグループ内での共用です。マンションの居住者さん専用充電器や、特定の企業グループの従業員さん向け充電器がこれに該当します。利用者が事前に特定でき、グループ内での料金精算や管理が比較的容易ですが、部外者が利用できないという点で、公開型には求められない特殊な要件が必要になります。
一方、公開型共有は、一般のEVユーザーさんが広く利用できる充電器です。商業施設の来客向け充電器や、高速道路のサービスエリアにある急速充電器が典型例です。利用者を事前に限定できないため、認証システムや課金システムがより複雑になります。
この違いは単なる分類ではなく、EV充電器に導入される課金や利用管理システムの根本的な考えに大きな影響を与えます。

一部共有と公開型共有では必要な管理システムのレベルが大きく異なる。(Photo by SWANOIR)
実用的な充電器の分類
従来の「経路」「基礎」「目的地」という3分類は、場所による整理としては意味がありますが、設置する機器や課金システムを検討する際には、利用権限や課金方式の違いを適切に反映していないため使いづらい分類です。
より実用的な分類として、まず「専用」「一部共有」「公開型共有」という利用形態による分類を行い、その上で場所や目的による分類を重ねる方式が望ましいと考えられます。
この分類により、充電インフラの運用形態がより明確になります。専用充電器では所有者による直接管理、一部共有では限定グループ内での調整、公開型共有では本格的な認証・課金システムという具合に、必要な機能と投資レベルが明確に区分されます。
充電インフラの整備を進める上では、まず利用形態を正確に把握し、それに応じた適切なシステムを選択することが重要です。場所による分類だけでなく、利用権限による分類を併用することで、より効率的で実用的な充電インフラの構築が可能になります。EVの普及には技術面だけでなく、利用者さんの実態に即したインフラ整備の視点が不可欠です。