現在の3分類とその定義
- 基礎充電
- 自宅での充電を指し、EVユーザーの充電の大部分を占めるべきであるとされています。
- 経路充電
- 移動途中での充電で、高速道路のサービスエリアなどが典型例です。
- 目的地充電
- 訪問先での充電で、主に商業施設やホテルなどでの充電を想定されているようですが、コインパーキング等もこの中に含むこととされています。
「基礎充電=自宅」という前提への疑問
現在の分類にも一定の意味がありますが、実態により即すためには検討が必要な点もあります。特に「基礎充電は自宅での充電」という定義には疑問があります。基礎充電の本質は「自宅である」ことではなく、「日常的に利用する場所での充電」ということです。
多くの人にとって、職場は自宅と同じかそれ以上に長時間滞在する場所です。週5日、1日8時間以上を過ごす職場での充電は、基礎充電としての性格を持っているとも考えられます。特に、集合住宅に住んでいて自宅での充電設置が困難な場合、職場での充電が実質的な基礎充電となっているケースも多くあります。
同様に、定期的に通う習い事や趣味の場所、週に数回利用するスポーツジムなど、個人の生活パターンによって「基礎的」な充電場所は変わってきます。これらを一律に「目的地充電」と分類することには検討の余地があります。
「目的地充電」の定義の曖昧さ
現在の「目的地充電」の定義も実態とのずれが生じている可能性があります。年に1〜2回しか利用しない観光地のホテルや、たまにしか行かない商業施設での充電と、毎週通うスーパーマーケットでの充電を同じ「目的地充電」として扱うことは、ユーザー行動の実態に合っているかという疑問があります。
頻繁に利用する場所での充電は、実質的には基礎充電としての役割を果たしています。一方で、本当の意味での「目的地充電」は、非日常的な場所での一時的な充電に限定されるべきかもしれません。

「目的地充電」の指す場所が広すぎるため、実質的な「基礎充電」など、様々な充電器が含まれてしまう。(Photo By SWANOIR)
「経路充電」の定義の問題
「経路充電」の定義も検討が必要です。高速道路のサービスエリアでの充電は間違いなく典型的な経路充電ですが、日常的な移動ルート上にある充電器での充電はどう分類すべきかという問題があります。
特に課題となるのが「道の駅」の扱いです。道の駅での充電は一般的に「経路充電」として分類されていますが、これは道の駅本来の運営方針と必ずしも一致していません。道の駅は単なる通過点ではなく、地域の特産品を楽しんだり、休憩や食事をしたりする「目的地」を志向した設計・運営が増えてきています。運営側も可能な限り長時間滞在してもらうことを前提とし、食事など複合的なサービスを提供しています。
このような施設での充電を一律に「経路充電」と分類することは、施設の本来の役割や利用者の実際の行動パターンを十分に反映していない可能性があります。通勤途中のコンビニや、いつものルートにある道の駅での充電は、移動途中であっても習慣的・計画的な充電です。
補助金政策への影響
現在の3分類は補助金政策にも大きく影響しています。集合住宅の充電設備や経路充電に手厚い補助が行われる一方で、個人の自宅充電設備への支援は限定的です。
しかし、実際のEVユーザーの充電行動を考えると、「よく利用する場所での充電環境整備」こそが効果的である可能性があります。それが自宅なのか、職場なのか、よく行く商業施設なのかは、個人のライフスタイルによって決まります。