WHAT
福岡市DX支援事業の採択案件として、学校給食の注文システムを開発しました。希望制給食の注文は紙ベースが中心で、注文確定が2週間前という制約、学校側の現金集金・事務負担など、関係者全員が課題を抱えている状況でした。ただし、この案件は単純な「紙をデジタルに置き換える」話ではありません。払う人(保護者や自治体)、使う人(児童・生徒)、提供者(給食事業者)という三者が存在し、それぞれ事情が異なる、三者の利害が絡む構造でした。
HOW
既存の業務フローの中で解く
業務プロセス自体の変更は権限外でした。既存の枠組みを前提に、その中で最適なシステムを設計しています。制約を外すのではなく、制約の中で最適な形にする必要がありました。
カスタマイズすべきところをカスタマイズする
一人ひとり事情が違う部分には、一人ひとりに合わせた設計をしています。児童ごとのアレルギー情報を事前登録し、該当メニューの注文時に個別の注意喚起を表示する仕組みを入れました。メニュー側に「卵使用」と書くだけでは、見落としが起きます。その子のアレルギー情報とメニューを突き合わせて、注文の瞬間に知らせる。これはデジタルでしかできないことです。アカウントとユーザーを分離し、1つのアカウントで兄弟姉妹をまとめて管理できる設計にしました。「1人1アカウント」は設計する側の都合であって、保護者の生活に合っていません。
効率化すべきところを効率化する
全員に共通する部分はシンプルに回します。注文期限を2週間前から前日まで短縮し、自動集計で学校事務の負担を削減しました。ここは個別対応が不要な領域なので、そのまま効率化しています。
誰も取り残さない設計
スマホの普及率は高いですが、前提にはできません。経済的な事情やさまざまな家庭環境で、スマホを持てない子供がいます。その子が給食を注文しづらい環境は、作りたくありませんでした。PWAを採用し、スマホでもPCでも同じ操作ができる仕組みにしました。学校のPCからでも注文できるので、デバイスの有無で差が出ません。結果として、紙の注文を残す必要がなくなり、本当の意味でのペーパーレス化が実現しています。


WHY
この案件で最も重視したことは、「どこをカスタマイズし、どこを効率化するか」の見極めでした。DXと言うと効率化が先に来がちですが、デジタル化にはもうひとつの価値があります。一人ひとりに合わせられること。アレルギー対応も、家族構成への対応も、アクセス環境への対応も、すべて「この子はどうか」「この家庭はどうか」を個別に扱えるからこそ成り立っています。一方で、集計や注文フローのように全員共通でよい部分は、シンプルに効率化する。カスタマイズすべきところとそうでないところを取り違えると、本来一人ひとりに合わせるべき部分が画一的になり、本来シンプルでよい部分が複雑になります。公共性の高いサービスだからこそ、この見極めが設計の核になりました。
