WHAT
Cookie同意画面は、多くのサイトで「閉じるもの」として扱われています。訪問者は中身を読まず、反射的に承諾か拒否を押して通過していることが多いと言われます。法律が本来求めているのは、収集する情報を伝え、訪問者に判断してもらうことです。しかし実装の目的は、同意を取得した事実を残すことに重点があるように見えます。法律を守ること自体が目的化し、伝えることも判断してもらうことも起きているようには感じられません。同時に、この画面は導入すれば必ず最初の接点になります。トップページやランディングページにどれだけ力を入れても、訪問者が最初に見るのはこの画面です。それが、サイトとは無関係な言葉と態度で現れる。判断できない画面であり、入口を塞ぐ画面でもある。この2つを別々に解くと、どちらも中途半端になります。Webサイトのコンテンツに合った形で、わかりやすく判断材料を伝える。1つの設計で両方を満たすことを条件に、自社サイトに実装しました。
HOW
誰のためのデータかを分け、正直に書く
収集しているのは2種類とわかりやすい形にまとめました。サイト訪問の分析と、広告効果の測定です。画面には、それぞれが誰のためのものかを書いています。サイト訪問の分析は「皆さんのため&弊社のため」、広告効果の測定は「主に弊社のため」。広告トラッキングが訪問者のためになる理由が、思いつかなかったからです。ただ、広告測定に協力してほしいのも本音です。そこで「私たちは広告が多い会社ではないので、『すべて承諾』でも、ご迷惑はかけないと思います」と書き添えています。判断してもらうには、判断材料が要ります。何を取っているかだけでなく、それが誰の利益になるのかまで書かないと、判断のしようがありません。
取得できる範囲を、その場で見せる
画面を開いて数秒後、表示が切り替わり、接続元から推測した都市名が現れます。「大阪からアクセスしてるかも」といった形です。名前や連絡先は取得していませんし、取得できません。分かるのは、接続元からの推測でこの程度まで。文章で「個人を特定する情報は取得しません」と書くこともできますが、どこまで分かってどこから分からないのかを、具体的に示す実装にしてみました。結果として、この表示は読み始めるきっかけになることも狙っています。反射的に閉じようとしていた訪問者の手が、一度止まることを期待するものです。ただし、怖いと感じて閉じる方もいるかもしれません。ただ、表示している内容は、表示しない実装でも同じように取得されているものであって、それを伝えることによって感じる怖さであれば、ここでは「開示する」ことを優先しました。
個別のトグルと、デフォルトオフ
2つのカテゴリは個別に選択でき、初期状態は両方オフです。GDPRが求める要件です。「GDPR対応」を掲げながら、初期状態でオンになっているサイトも見かけます。同意を取得した形は残りますが、訪問者は判断していません。
- Cookie同意画面に必要な要素は?
- Cookie同意画面には、収集するデータの種類、利用目的、第三者提供の有無を明示する必要があります。GDPRではこれに加え、各カテゴリの個別同意とデフォルトオフが求められます。ただし、法的要件を満たすことと、訪問者に伝わることは別の問題です。今回の設計では、技術的に正確でありながら、どのような方にも読める言葉選びを意識しました。

WHY
対応するかどうかを、問いにしない
日本では、GDPRへの対応は努力義務にとどまります。海外展開を掲げる企業でも英語モードすら未対応であることは珍しくなく、「欧州が過剰なだけで、対応する意味がない」という声を聞くこともあります。弊社サイトでは、対応すべきかどうかを出発点にしていません。対応するとして、それ自体をどう(多少なりとも)価値にするか。設計はそこから始めています。
2つの問題を、別々に解かない
目の前には問題が2つありました。判断できない画面であること。入口を塞ぐ画面であること。この2つは、別々に解こうとすると噛み合いません。判断できる画面を作ろうとすれば、書くべきことが増え、画面は重くなります。入口を軽くしようとすれば、書くことを削ることになります。法務の要件とサイトの体験を別々の担当が持てば、たいてい前者が勝ち、後者が捨てられます。CMPを入れて終わりにする形は、この流れでは至極真っ当な判断です。今回は、1つの解で両方を満たすことを条件にした試装です。サイトのコンテンツと同じ言葉、同じ態度で、判断材料を書くことを目標にしました。位置情報の表示は、その象徴です。取得範囲を説明ではなく具体的に示すことは判断材料の提示であり、「大阪からアクセスしてるかも」という書き方はサイトの口調そのものでもあります。1つの実装が、2つの問題の両方を達成することを狙っています。
最初の接点から、読み方をつくる
同じ考え方は、Cookie画面に限りません。訪問者がどういう姿勢でコンテンツを読み始めるか。最初の接点で、どう受け取ってもらうか。アプリケーション全体の体験設計に関わります。Cookie同意画面は、その最初の実装場所でした。なお、正解はひとつではないと考えています。熱量の高いファンを持つブランドであれば、「黙ってAccept!」のような書き方のほうが合っているかもしれません。大事なのは、その会社らしさが細部まで一貫していることです。
