なぜ「相見積もり」と言いたくなるのか
EV充電工事はまだ新しい分野であり、相場感がつかみにくいのが現状です。また、業者によって提案内容や価格が大きく異なることが多く、「騙されるのではないか」という不安を感じる方が多いようです。この不安がある場合、複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討したいと考えるのは自然な流れです。
見積もりの本来の意味
見積もりとは本来、明確に定義された「要件」に対するアンサーです。公共事業やシステム開発の分野では、発注者が詳細な仕様書や要求仕様書(RFP:Request for Proposal)を作成し、それに基づいて各業者が提案と見積もりを行います。この場合、同じ要件に対する複数の提案を比較するため、相見積もりに意味があります。
企業がシステム開発を外部委託する際も、要件定義書を作成してから複数のベンダーに見積もりを依頼します。要件定義ができない場合は、専門のコンサルタントにRFP支援業務を依頼し、適切な費用を支払って要件を明確にします。
EV充電工事で起こる問題
- A社の見積もり
- 工事費5万円で、3kWコンセント設置、自宅への穴あけ工事、メンテナンス対応なし
- B社の見積もり
- 本体込み20万円で、6kW専用充電器設置、引込工事により自宅損傷なし、長期メンテナンス対応あり

同じ「EV充電工事」でも施工内容が異なれば、見積もりを適切に比較できなくなることがあります。(Photo By Zaptec on Unsplash)
増えてきた現場調査費用
一部の業者は現場調査に費用を請求します。これに対して「見積もりなのに費用を取るのはおかしい」と感じる方もいますが、実際には合理的な理由があります。
この現場調査を実施した会社が作成した結線図や施工内容を参考にして、別の業者に依頼することが可能となるのです。つまり、現場調査は「他社でも活用できる価値のある情報」を提供するサービスでもあります。この観点からは、現場調査に費用が発生することは合理的な理由があります。
適切な業者選びのために
EV充電工事で重要なのは、価格の比較ではなく、自分のニーズに最も適した提案をしてくれる業者を見つけることです。まず、ご自身の要件を明確にすることから始めましょう。
必要な充電能力(3kW、6kW など)、設置場所の制約条件、予算の上限、アフターサービスの希望、工事による自宅への影響の許容範囲などの要件を整理した上で、それに適した提案をしてくれる業者を選択することが、満足度の高いEV充電環境を実現する近道です。

要件を明確にしてから業者に相談することで、価格以外の価値も含めた適切な判断が可能になります。(Photo By SWANOIR)