日本から逆算しても全体像は見えない
日本の充電器規格の状況は、率直に言うと「分かりづらい」状況です。複数の規格が混在しており、日本国内の状況だけを見ていても、世界全体の規格動向を理解することは困難です。世界の状況から日本を見た方が整理して理解しやすくなります。
世界の充電規格は大きく5種類
- CCS(コンボ:Combined Charging System)
- Type1とType2の2種類
- CHAdeMO(チャデモ)
- 日本発の規格
- GB/T(日本未導入)
- 中国の統一規格
- NACS(North American Charging Standard)
- テスラが開発した規格

世界各地域で採用されている主要な充電規格の分布(Illust by SWANOIR)
CCS-Type1(J1772&CCS1):北米の主力規格
CCS-Type1は正式名称がJ1772で、AC充電(いわゆる普通充電)に使用されます。DC充電版(いわゆる急速充電)は単にCCS1と呼ばれます。
この規格の特徴は、一つの充電口でACとDCの両方に対応していることです。充電口の上半分だけを使うとAC充電、全体を使うとDC充電という仕組みになっています。主に北米で採用されており、理解しやすい構造が特徴です。
CCS-Type2(Mennekes&CCS2):ヨーロッパの標準規格
CCS-Type2のAC充電の正式名称はMennekesで、DC充電版がCCS2です。差し込み方の仕組みはType1と同じで、充電口の一部を使うかすべてを使うかでAC/DCが決まります。主にヨーロッパで採用されており、ヨーロッパ域内では原則としてCCS2で統一されています。
GB/T:中国の統一規格
中国で採用されている国家規格で、ACとDCの両方のタイプが存在します。中国国内では原則としてGB/Tで統一されており、他国メーカーも中国市場向けには車両の充電ポートを作り変えて対応しています。
NACS:テスラ独自規格
NASCはACとDCが同じコネクタ形状という特徴があります。従来はテスラ専用の規格でしたが、近年、北米市場においては、他メーカーでも採用が広がっていると言われます。
日本の複雑な状況とCHAdeMOの可能性
- AC充電(2種類)
- J1772(CCS-Type1の上半分)とテスラ専用のNACS
- DC充電(3種類)
- CHAdeMOが主流、一部車種でCCS1(CHAdeMOからの変換プラグで対応)、テスラはNACS

主要4地域における充電規格の利用状況(Illust by SWANOIR)
各地域の統一状況
世界各地域の充電規格統一状況を見ると、最近では以下のようになっています(統一前の車両を除く)。
欧州:【CCS2】で統一
中国:【GB/T】で統一
北米: 【CCS1】と【NACS】が併存
例えば、テスラも地域に応じて充電ポートを作り変えています。中国向けはGB/T、ヨーロッパ向けはCCS2という具合です。
よく話題になる「NACS共有」は主に北米での動きです。日本の自動車メーカーにとって北米市場が重要なため、このニュースが「世界統一」のように報道されることがありますが、実際は北米エリアでの検討事項です。
なぜ海外ブランド車の日本導入が限定的なのか
日本の充電規格の複雑さは、海外自動車メーカーの日本参入にも影響しています。BMW、MERCEDEZ、TESLA、HYUNDAI、AUDI/PORCHEなど、多くの海外ブランドが日本で販売している車種は、本国ラインナップの半分程度に留まっています。
これは、日本市場向けに充電ポートを作り変える必要があるためです。市場規模と開発コストを考慮すると、すべての車種を日本仕様にすることが困難な場合が多いようです。
今後の動向は予測困難
充電器の規格はあくまでも車両の付属設備です。そのため、大ヒット商品が全く異なる充電ポート形状を採用すれば、一気に勢力図が変わる可能性もあります。一方で、iPhoneの充電ポート統一のように、効率性や環境負荷の観点から規格統一が求められる可能性もあります。ただし、すでに相当数の充電器が世界各地に設置されているため、急激な変化は現実的ではありません。
これらの状況を踏まえると、技術的な優位性だけでなく、政治的・経済的要因も規格の普及に大きく影響するため、充電器の規格に関して特定の規格に「一点賭け」することはリスクが高いと思われます。
ご自宅への設置という観点では、比較的汎用性の高いJ1772タイプかつ、メーカーに依存しない充電器の方が長期的な観点でリスクが低いと思われます。

充電プラグの形状の将来は見通しが難しいため、汎用性が高いものがリスクが低い(Photo by SWANOIR)